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ディスプレイオーディオ付きのスズキ新型「アルト」に乗ってみたら、安全機能・便利機能の充実に驚いた

スズキ「アルト」は1979年に販売が開始された軽自動車で、2016年には国内累計販売台数が500万台に達し、2021年12月時点では526万台に達したことが発表されるなど、ベストセラーと言ってよい売り上げを記録しているクルマとなっている。2021年12月には9代目となる新型アルトの販売が開始され、従来モデル同様人気を博している。【この記事に関する別の画像を見る】そうしたアルトの新型モデルでは、新しく7型ディスプレイを備えた「ディスプレイオーディオ」がメーカーオプションとして設定されており、いずれのモデルでも機能に若干の違いはあるが装着できる。今回はその新型アルトのディスプレイオーディオがどのような使い勝手であるのか、実車に乗ってみて分かったことなどを紹介していきたい。■ 最上位モデルのHYBRID Xでは全方位モニター付ディスプレイオーディオが選択可能にスズキの新型アルトには、大きく「HYBRID X」「HYBRID S」「L」「A」という4つのグレードが用意されている。HYBRIDが付くXとSにはいわゆるマイルドハイブリッドと呼ばれる小型のハイブリッド機構が用意されており、LとAにはマイルドハイブリッド機構は用意されない構成になっている。いずれのモデルでも標準のオーディオはオーディオレス(つまりセンターコンソールには目隠しぶたがしてあり、カーナビなどは何も設置されていない状態)になっており、ディーラーオプションとして設定されているカーナビを選択することが可能だ。また、ADASの機能が標準で搭載されているのも、大きな特徴の1つ。前面ウィンドウに装着されている2眼カメラにより、衝突被害軽減ブレーキ(事故が発生しそうなときに車両が自動でブレーキをかける機能)、車線逸脱警報、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストなどの機能が用意される。今や軽自動車でも標準でこれらが装備される時代になってきたということに驚きを禁じ得ない。ADAS関連のこうした機能はもちろん安全性の向上という面もあるが、先行車発進お知らせ機能などは、実はとても便利だ。信号で止まったときなどにエアコンを操作していて、先行車が発進したのに気がつくのが遅れて後ろの人にププーと鳴らされるというのはドライバーなら1度は経験したことがあると思う。そこに先行車発進お知らせ機能があると、先行車が発進すると車両が音や画面で通知してくれるのでそうしたことを防ぐことができ、まわりのドライバーに迷惑をかけたりすることを減らすという意味でも便利な機能だ。また、ハイビームとロービームを車両が自動で判別して切り替えてくれる機能も、ハイビームを多用する環境ではとても便利で、ドライバーの操作を減らして疲労を抑えるという観点で素晴らしいと思う。新型アルトのもう1つの大きな特徴は、スズキの国内向けの自動車としては初めてディスプレイオーディオがメーカーオプションとして設定されていることだ。HYBRID Xは「全方位モニター付ディスプレイオーディオ」というメーカーオプションが選択可能で、HYBRID S、L、Aでは「バックアイカメラ付ディスプレイオーディオ」というメーカーオプションが選択可能になっている。この2つの大きな違いは、全方位モニター付ディスプレイオーディオが前後左右4つのカメラとヘッドアップディスプレイを搭載しており、バックアイカメラ付ディスプレイオーディオは後方1つのカメラのみが搭載されヘッドアップディスプレイはなしということになる。全方位モニターの場合には、前方グリルの(運転席から見て)右側と、左右のミラーの下部、後部ハッチバックドアのドアノブの4か所にカメラが用意されており、その4つの画像データを元にリアルタイムに合成することで自動車の周囲の情報をバードビュー(鳥から見た視点のこと)で確認することができるようになる。例えばバック時などにこれを利用すると、現在自車がどの位置にあるのかを確認しながらバックすることができる(この点は後述する)。ヘッドアップディスプレイは、運転席の前方に装着される透過型のレンズに下部から映像が投影される形になっているディスプレイで、ドライバーの視野を遮ることなく、さまざまな情報を表示することができる。この透過型のレンズはエンジンがOFFになっているときにはダッシュボードの中に格納されており、イグニッションモードにしたときに自動でふたが開いて出てくるという形になっている。タコメーター、交差点表示、瞬間燃費、エアコン情報などの機能が用意されており、後述するがAndroid Autoを利用している場合にはGoogle マップと連動して交差点での右左折の指示を表示させることができる。■ スマホを使いこなしている人にはとっても便利なディスプレイオーディオ今回の新型アルトに搭載されたディスプレイオーディオは普及価格帯(100万円前後~200万円前後)の車両で採用が進んでいるものだ。自動車のセンターコンソールには、長い間いわゆる「カーナビゲーション」(以下カーナビ)が鎮座しており、海外に比べて高いアタッチレート(購入時に標準装備、ないしはメーカー/ディーラーオプションでの装着される率のこと)が高いのが日本市場の特色となってきた。それほど日本の自動車シーンで必要不可欠の機器と考えられてきたのがカーナビだったと言っても過言ではないだろう。そうした市場状況の中で最近登場し、普及段階を迎えているのがディスプレイオーディオだ。ディスプレイオーディオと言うと、カーナビの最も重要な機能である「カーナビよりも機能が少ない廉価版のカーナビ」という、ややネガティブな認識を持たれている方も少なくないのではないだろうか。確かに、ナビゲーション機能を省略することで、ディスプレイオーディオはカーナビよりも安価に製造することができ、価格もカーナビに比べて安価であるのは、アフターマーケット向け製品のカーナビとディスプレイオーディオを比較すれば明らかでそれは間違ってはいない。しかし、ディスプレイオーディオの方が機能は少ないのかと言えば、それは一概にそうとは言えない。なぜかと言えば、ディスプレイオーディオは、スマートフォン(iPhoneやAndroidスマホ)とセットで利用してカーナビの機能やオーディオ再生機能を実現する(技術的にはスマホの画面と音をディスプレイに表示している形になる)。このため、スマホではアプリストア(Apps Store、Google Play Store)で公開されているアプリで機能を拡張できるのと同じように、ディスプレイオーディオもアプリを利用して機能を拡張できる、それが固定機能のカーナビとの最大の違いになる。ただし、スマホのアプリのすべてがディスプレイオーディオで利用できる訳ではなく、ディスプレイオーディオに対応した一部アプリだけが利用できる。もう1つの大きな違いは、スマホは常時インターネット回線に接続されており、データはローカルのストレージに保存されているものだけでなく、クラウドと呼ばれるインターネット側のストレージに保存されているデータも活用できる。その代表例が地図データで、一般的なカーナビではインターネットに常時接続されていないので、地図のデータはローカルのストレージにあるデータを参照するだけになる。最近では数か月に1度という高い頻度で地図データが更新されるカーナビも一般的になっていて、ユーザーの都合(面倒だというのが最大の理由)で、更新は1年に1度、ないしは数年に1度というのが現実だ。そうすると、開通してすぐの道路のデータが反映されておらず、新しい高速道路を走ると、道なき道を走ることになるというのはよくある光景だろう。ディスプレイオーディオがナビゲーションアプリとして使うGoogle マップなどの地図データは、ローカルのストレージにキャッシュ(一時データ)として保存することもできるが、基本的にはクラウドに置かれており、必要に応じてインターネット回線を経由してアクセスする仕組みになっている。このため、地図データは日々更新されており、昨日開通したばかりの高速道路のデータも翌日にはもう反映されている、なんてことも。そうした「アップトゥーデート」なこともディスプレイオーディオのメリットと言えるだろう。このように、ディスプレイオーディオ+スマホにもメリットがあり、その一方デメリットもある。例えばApple CarPlay、Android Autoでは車両側のディスプレイで動画再生ができないことや、スマホをつながないと単なるディスプレイであること、ナビの機能が日本に特化していないことなどがそれだ。そうしたメリット・デメリットをよく検討して従来のカーナビがいいのか、それともディスプレイオーディオがいいのか選びたいところだ。なお、今回紹介する新型アルトの場合、ディスプレイオーディオはメーカーオプションで、従来型のカーナビの方がいいと思えば、ディーラーオプションとして選択することが可能。もちろんオーディオレスという形でアフターマーケットのカーナビを取り付けることも可能だ。■ 必要なのはUSB-A端子でスマホを接続するだけ。目的地の検索も音声だけでできるお手軽感今回は新型アルトのHYBRID Xに全方位モニター付ディスプレイオーディオのメーカーオプションを搭載した試乗車で実際の使い勝手をチェックした。今回のアルトに搭載されているディスプレイオーディオは7型のディスプレイサイズになっており、AppleのiPhone向けのApple CarPlayと、GoogleのAndroid OSを搭載したスマホ向けのAndroid Autoという2種類のスマホに対応している。スマホと車両を接続するには、センターコンソールにあるUSB端子(いわゆるA端子と呼ばれる上下がある従来のUSB端子)に接続する必要がある。このため、スマホに合わせて、iPhoneであればA端子(車両側)-Lightning端子(スマホ側)というケーブルが、AndroidスマホならA端子(車両側)-C端子(スマホ側)ないしはA端子(車両側)-MicroB端子(スマホ側)というケーブルが必要になる。なお、Apple CarPlay対応機器では最近はワイヤレス接続(Wi-FiとBluetoothを利用する)できる車両が増えつつあるが、このアルトのディスプレイオーディオは、ワイヤレス接続には未対応だ。ワイヤレス接続ができると、1度ペアリングのためにケーブルで接続したあとは、ワイヤレスで自動接続されるケーブルをつなぐ面倒がないので、例えばスマホをカバンの中に入れっぱなしでもApple CarPlayを利用することが可能になり、利便性が高い。その意味ではできればBluetoothには対応してほしかったところで、将来のバージョンなどで対応していただけるとうれしい。なお、Android AutoはAndroid Auto自体が日本でのワイヤレス接続には未対応となっているので、この新型アルトでも同様に未対応だ(これは車両側の制限ではなく、Android Auto側の制約となる)。センターコンソールのUSB-A端子の横には、どう考えても“スマホを置いてください”と言わんばかりのスペースがある。今回はやや長めのケーブルを用意していったが、継続して利用するなら10cmとか20cmなどの短めのケーブルを用意すると、余分なケーブルで絡まったりじゃまになったりすることがなくなるので、使い勝手の観点からも、見た目の美しさの観点からも短いコードを用意する方がいいだろう。また、センターコンソールのディスプレイオーディオ用のUSB-A端子以外に、助手席側にもUSB-A端子が2つ用意されている。こちらは給電専用で、スマホやルーターなどの機器を充電することが可能だ。助手席に座った人や後ろの席の人のスマホも同時に充電できるというのはうれしいところだ。なお、それ自体はApple CarPlay/Android Autoの標準機能だが、車両側のステアリングに付いている音声認識のボタンを長押しすると、Apple CarPlay/Android Autoの音声検索機能を、画面を触らずに利用することができる。もちろんアルトでもこの機能を利用可能で、ステアリングに付いている音声検索のボタンを長押しするとApple CarPlayならSiriが、Android AutoならGoogleアシスタントが呼び出されて音声検索機能が利用できる。一般的なカーナビにも音声検索機能が用意されていることもあるが、たいていはコマンド形式で、「目的地設定、住所……」みたいに階層をたどっていかないと検索できないのに対して、スマホを利用しているApple CarPlay/Android Autoでは、スマホの音声検索機能と同じで「どこどこへの経路を検索」と自然言語で話しかけるだけでいい。例えば、「千代田区神田神保町1-105(編集部住所)への経路をGoogleマップで検索」などと、SiriやGoogleアシスタントでやっている音声検索を行なえば目的地へのルートが引かれるので、あとは画面で「出発」などのボタンを押すだけだ。■ 音楽の再生もスマホで使っている音楽アプリがそのまま使え、再生時も音声で可能新型アルトにおけるApple CarPlayやAndroid Autoの使い勝手だが、前述のようにApple CarPlayでの無線接続がサポートされていないことを除けば過不足はなく、ほかの車種と同じように利用することができる。例えば、Apple CarPlayでiPhoneを接続して利用した場合には、Appleのサブスクリプション型の音楽サービス「Apple Music」を利用することができる。筆者の場合は、すでに普通にスマホやPCなどでApple Musicを常用しており、ローカルに音楽ファイルは持たないようになっている。このため、Apple Musicが使えないと音楽の再生もできない。Apple CarPlayやAndroid Autoを使い始める前は、Bluetoothで接続したりしていたのだが、プレイリストを見に行く度に結局スマホを触らないといけなくて面倒だった。また、カーナビ自体に音楽ファイルを再生する機能があっても、PCに保存している音楽データをSDカードなどにコピーしておく必要があり、これまた面倒だったことは否定できないだろう。しかし、Apple CarPlayやAndroid AutoでApple Musicを使う場合には、センターコンソールにあるディスプレイオーディオのディスプレイから、プレイリストやライブラリをたどっていって目的の曲を探したりすることができるし、音楽ファイルはスマホ内になくても、クラウドにアクセスして自動でダウンロードしてきて再生してもらえる。また、前出のSiriやGoogleアシスタントの音声検索機能を利用して「サザンオールスターズをかけて」と言えば、サザンオールスターズの曲をかけてくれるし、現代的だ。特に音声認識を使って、かけるプレイリストとアーティストを変える機能はとても便利で、ディスプレイを触る必要すらなく安全なので、1億2千万人に強く利用をお勧めしたいところだ。また、スマホの画面を見なくても、当日の予定を確認することができるスケジュール機能もあるし、スマホの予定表から目的地の住所をクリックすると、自動で地図ソフトが起動し、目的地をほぼワンタッチで設定することができるのも便利だ。従来のカーナビであれば、東京都千代田区……と階層で探していき、使いにくい五十音キーボードで入力して検索していたことを考えれば、そうした使い勝手には大きな差があると言える。このアルトに固有のディスプレイオーディオ向けの機能としては、Android AutoのGoogleマップのナビゲーション機能とヘッドアップディスプレイの連携機能がある。といっても、ナビゲーションのすべてが案内されるのではなく、直進や右左折といったドライバーがハンドル操作をする必要がある場合にヘッドアップディスプレイに表示してくれる。ヘッドアップディスプレイは、位置的にメータークラスターよりも高い位置にあるので、メーターまで視線を落とさずとも見えるのが特徴。つまり前を向いている状態で、ほとんど視線を落とさずに情報を確認できるので、運転しているときに直進か、右折か、左折かということが視覚的に分かるだけでも非常にありがたいと言える。ギヤをバックに入れると、普通の車両だけどバックカメラに切り替わって車両後方がディスプレイに映し出される。それに対して新型アルト HYBRID X+全方位モニター付ディスプレイオーディオでは、自動的にバードビューと後方カメラの映像に切り替わる。左側に4つのカメラを利用して車両の周囲360度がバードビューで合成映像として表示され、右側にバックカメラの映像が表示される。周囲にクルマがある場合には、バードビューでそのクルマとの距離なども把握することができるし、バックカメラの映像では駐車スペースに向けて現在車両がどの方向を向いているのかなども把握することができる。車庫入れが苦手という人にはこれはものすごくうれしい機能ではないだろうか。こんな機能がいっぱい付いていて“さぞお高いのでしょう?”と思われるかもしれないが、新型アルト HYBRID X(2WD、CVT)のメーカー価格は125万9500円、メーカーオプションの全方位モニター付ディスプレイオーディオの価格は11万2200円となり、合計で137万1700円。ここに税金などがかかってくるため、150万円弱というのが総額ということになるだろうか。現状Bセグメントの国産コンパクトカーでは、ADAS付き、ディスプレイオーディオ付きと考えていくと220~250万円近くの価格になっているので、それよりも100万円近く安く買えるということになる。このコストパフォーマンスのよさはさすが“ベストセラーカーであるアルトならでは”とも言うことができるのではないだろうか。

Car Watch,笠原一輝