• /
  • ブログ
  • /
  • 座談会 – ミレニアル世代のアーティスト達|Tokyo Art Beat

ミレニアル世代は、1980~2000年頃に生まれ、デジタルネイティブとも呼ばれる。その世代で現在注目されつつある国内若手アーティストは、ポストインターネット的な手法・表現や、コミュニティとしての活動などが特徴として多く見られるように思う。他方で、インターネット的な感覚とは真逆である「身体性」や「現場性」といったキーワードが同世代の作り手の中で出てきている。ミレニアル世代が扱うそれらの感覚は、生々しいアプローチを持ってしながら表出してくるものは軽やかで、後味爽やかだ。そういった視点から、美術系大学に在籍し自身も制作活動を行っている筆者が気になる、同年代のアーティスト達を紹介したい。多摩美術大学絵画科油画専攻4年生の飯島暉子さん、同じく長尾郁明さん、東京芸術大学技法材料研究室修士1年生の日下部岳さん、「原始的宇宙人」のひろぽん。この4人に座談会形式でそれぞれの制作活動とそのスタンスについて話してもらった。

日下部: 自分は絵を描いています。これは≪田口≫というペインティング作品で、金属顔料のみで描いてます。面相筆でとにかく同じ作業をえんえんと続けた結果、田口になる。滅私して、主体は作品にあってほしいという考えでやっていました。

ーーこれはマスキングを使ってないんですね。フリーハンドで描くのにはこだわりがあるんですか。日下部: 時間をかけたくて。こんなに手間をかけても結局田口にしかならないのになあ、という無意味な時間を過ごしたかった。長尾: 時間なんですね。ステラのブラックペインティングとかも、フリーハンドというか、引いたとこのキワがモソモソしてるんですよね。すごくそれが意味あるなと自分では思ってて。これもちょっとマスキングでは描いてないなというのが分かって、見る側としてはだいぶ感じるものがある。線を引くというよりは、線を描くという感じ?日下部: そうですね。 

ーーどれくらい時間かかってるんですか?日下部: 半年ですね。1日14時間くらい。

最近作っているのは、拾ってきた石を粉砕して顔料にして、その石を絵に再現するということをしています。別に僕は石が好きとかではなくて、石的なるものを信仰したいんです。つまり初音ミクですね。石的なるもの=初音ミクです。ーー初音ミクで石。日下部: 初音ミクと石を描いています。ーー初音ミクでは描かないの。日下部: 初音ミクの顔料があれば一番良いんですけど、無いので。光とかになっちゃう。初音ミクのフィギュアとかだと、あれはまたややこしくなるかな。飯島: バイオアーティストユニットのBCLが初音ミクの展示を金沢21世紀美術館でやってたよね。初音ミクのデータをパソコン上で採取して、人間の心筋細胞に近いものを作っていた。今の話を聞いて、何によって初音ミクを描くのかというのはすごく大事なのかなと思った。日下部: 初音ミク的なるものと石的なるものって自分の中で近いので。絶対的受動性を獲得しているという点で、この世界にとってピュアな存在だ、と思って。全然うまく言えないですけど。まだ途上なので。

長尾: ≪2015.05.01 (Fri)≫という作品は、2015年5月1日の0時0分から次の0時0分が来るまでのデジタル時計の写真1441枚がグリッド状に並んでいます。1分間に一度、シャッターを切る行為を24時間続けるという、写真作品なんですけど身体パフォーマンス的な要素もあります。ーーじゃあこれはタイマーではなくて手動で。長尾: そう。全部00秒でシャッターを押すというルールなんですが、1秒ずれていたり、大きくずれているものは40秒くらいずれてます。でもミスってもそのまま続けるということにしてて。そのミスしているところに自分の身体の存在が現れる。グリッドの中に自分の身体を落とし込むという考え方でやっています。アダルトビデオの場合も、グリッドと身体。両極端なものが同時に存在してる画面を作りたい。

ひろぽん: ひろぽんって呼んでください。ひろぽんです。長尾: 「ひろぽん」という名前で活動してる?ひろぽん: 活動というか、ひろぽんとして生きてる。「ひろぽんって呼んでね。」ってこと。長尾: わかりました(笑)呼ばせて頂きます。ひろぽん: えーと、プリミティブアーツマスターを目指して活動をしています。(ということにしてる。)芸術家ってよく作品を作るけど、僕は芸術活動をしてるだけだから作品は作ってない。あと、好きな色は青。好きな食べ物は、肉と草だね。脂質代謝になりたいの。要するに何が言いたいかっていうと原始人になりたい。原始人はまねっこじゃないじゃん、火を作った時。そういう原始的な創造に立ち会うべきだと思ってて、だから僕も火を発明しないといけない。長尾: 火ってもう発明されてるじゃないですか。ひろぽん: 自分の中で原始人になって、知らない体でやらないといけない。混沌と秩序を行ったり来たりしたいの。

座談会 – ミレニアル世代のアーティスト達|Tokyo Art Beat

飯島: イヤホンがワイヤレスなのがさっきから気になって。長尾: ハイテクですね、原始人なのに。ひろぽん: 機動力重視だから。あとは四足歩行の練習をしたり、ダンス部作って教えたりしてる。飯島: コンテンポラリーダンス?ひろぽん: ああそれもう本当いちばん嫌い。オリジナルダンスって呼んでる。オリジナルってプリミティブじゃん。全ての筋肉とか関節を無秩序に動かして、呼吸もランダムにするっていうのを今は教えてる。これマジできつくて、段階がいくつかあるんだけど、レベル10でやると多分30秒以内に死ぬ。

ーー制作にはみなさんどのくらいお金かかっていますか。飯島: 今までは誰でも出来るようなラフさが重要で、お金をかけないように抑えていたんですけど、最近は実験的に素材を変えたり増やしたりしていて、けっこうお金がかかり始めました。日下部: 顔料代が最近かからなくなりました。みんな: 石。ひろぽん: すばらしい。長尾: あのライトボックス一つ作るのに9万円くらい。次のクレジット支払いがヤバくて。今必死にバイトを入れてます。ひろぽん: 僕はほぼ0円。活動のためにわざわざ買うものはないかな。

ーー作品の売り買いに関してはどうですか。長尾: ナイーブな話だね。だって売ったことがないから何も話せない。飯島: 今までそういう金銭的なやりとりについてあまり考えたことがなかった。私の場合は売るとしたら指示書が重要になるかな。ひろぽん: 作品を買った人に命令できるの?指示書って。飯島: 展示の仕方についての指示がね。ひろぽん: 例えば作品を涙で育ててくださいって指示をしたら、買った人は毎日そういう行為をしなきゃいけなくなるってことじゃないの。飯島: そういう作品もあると思います。ひろぽん: それはすごくよいなと思った。

ーー売らないとアーティストは別のことでお金を稼いで生活しなきゃいけないわけじゃないですか。そこのとこがいつも気になる。みんな売買についてはあまり考えないんですか。ひろぽん: 岡本太郎は絵を売ってないじゃん。贈り物でしょ。彼は本を執筆して稼いでいた。作品を売るってなったときに、この人に売りたくないなって時にもお金さえ払われれば売っちゃうみたいなのがあるじゃん。そういうのが嫌だから。岡本太郎の絵は好きじゃないけど、そういうところいいなと思う。日下部: 売れるもんなら売りたいですけどね。長尾: 僕は売る売らない関係なしに、発表し続けたいです。

飯島暉子1994年生まれ。多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻4年生。参加したグループ展に、「トーキョーワンダーウォール公募2015」(東京都現代美術館)、「TAMABI select-1-」(多摩美術大学アートテーク)。日下部岳1993生まれ。東京藝術大学技法材料研究室修士1年生。長尾郁明1991年生まれ。多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻4年生。参加したグループ展に、「Video is meeting」(Art space Kaikas’)、「SUPER OPEN STUDIO 2015」(TANA STUDIO)、「Workstation.Group Show:Summer Dream」(Workstation.)、「TAMABI select -1-”」(多摩美術大学アートテーク)、「SUPER OPEN STUDIO 2016」(TANA STUDIO)。ひろぽん17歳の女の子。趣味はおしゃべり。撮影: 松川眞央

[TABインターン] 大重千尋: 1992年生まれ。岡山県出身。油画専攻。テーマソングは『ハンドインマイポケット』。就職活動中です。